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コラム

2021.03.29
遺言書にはどんな効力があるの?遺言の効力について専門家が徹底解説

遺言書には、書いた本人が望む相続を可能にする効力があります。ただし、有効な遺言書にするには形式的な要件があるほか、遺言書に書いて効力が発生する事項も法律で決まっています。ここでは、遺言書の効力や遺言書を書くときに気を付けたい遺留分について説明しますので、希望の相続実現のために役立ててください。

1. 遺言書を書くとどんな効力があるの?

遺言書には、亡くなった人の財産の帰属先を決めるという大きな効力があります。ただし、遺言の効力を発生させるためには条件があることも知っておきましょう。

1-1. 遺言者の希望どおりの相続が可能になる

遺言書の効力は、遺言者の希望どおりの相続を実現できるということです。死後に所有していた財産が誰にどのようにして引き継がれるかについては、民法で基本的なルールが定められており、これを法定相続と言います。遺言書を書けば、法定相続より遺言書が優先しますから、本人が自分で相続の内容を決められることになります。

1-2. 有効な遺言書にするには形式的な要件がある

遺言書というのは、どのような形でも効力が生じるものではありません。遺言書には形式的な要件があり、要件をみたしていない遺言書は無効となってしまいます。

遺言書にはいくつか種類がありますが、一般によく利用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。それぞれの遺言書については、民法に作成する上でのルールが定められていますから、ルールに則って作成する必要があります。

1-3. 遺言書で効力を発生させられる内容は決まっている

遺言書に何を書いても効力があるわけではありません。遺言書に書いて効力が生じる内容というのも決まっています。

遺言書で効力が生じる内容は遺言事項と呼ばれ、具体的には次のような内容になります。

①相続のルールの修正

相続人の廃除、相続分の指定、遺産分割方法の指定や遺産分割の禁止など

②財産の処分に関すること

遺贈、一般財団法人の設立、生命保険の受取人変更など

③身分関係に関すること

認知、未成年後見人の指定など

④遺言の執行に関すること

遺言執行者の指定など

1-4. 遺言書には効力がない内容を書いてもいい

遺言書には遺言事項しか書けないわけではありません。付言事項と言って、残された人へのメッセージなどを付け加えるのがむしろ一般的です。

付言事項には法的な効力はありません。しかし、付言事項を書いておくことにより、遺言の内容を決めた理由や家族への感謝の気持ちを伝えることが可能になります。

2. 自筆遺言書と公正証書遺言のメリット・デメリットについて

上にも書いた通り、有効な遺言書を作るときには、法律に則った形にしなければなりません。遺言書は、通常、自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかの形式で作成します。

2-1. 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

自筆証書遺言は自分で全文を手書きして作る遺言書です。一方、公正証書遺言は、公証人に依頼して公正証書の形にしてもらう遺言書になります。それぞれのメリット、デメリットは、次のようになっています。

自筆証書遺言 公正証書遺言

メリット ・手軽に作れる

・費用がかからない
・書いたことを秘密にできる ・形式面で有効な遺言書を作れる
・原本が公証役場に保管される
・検認不要

デメリット ・書き方を間違えると無効になる

・紛失や改ざんのリスクがある
・検認が必要 ・手続きが面倒
・手数料がかかる
・証人が必要

2-2. 自筆証書遺言が無効になるケースとは?

公証人が関与して作成する公正証書遺言は、形式面で無効になるリスクはありません。一方、自筆証書遺言の場合、自分だけで作成すれば、無効なものが出来上がってしまう可能性があります。

無効な自筆証書遺言としてよくあるのは、以下のようなケースです。

2-2-1. 日付が不明確

遺言書には作成年月日を書かなければなりません。「〇年〇月吉日」のような日付が特定できない記載では、遺言書が無効になってしまいます。

2-2-2. 直筆で書いていない

自筆証書遺言は本人が直筆で書いていなければ無効です。ただし、財産目録を添付する場合には、財産目録のみパソコンで作成してもかまいません。

2-2-3. 複数の人が共同で書いている

遺言書は1人で1通ずつ作成しなければならないルールになっています。たとえ夫婦であっても、2人で1通の遺言書を作ることはできません。

2-2-4. 他人が無理矢理書かせている

本人の直筆で書いてあっても、他人が無理矢理書かせた遺言書は無効です。本人が認知症などで内容を理解できないにもかかわらず、第三者が遺言書を書かせているような場合には、効力はありません。

2-3. 自筆証書遺言書保管制度で自筆証書遺言のデメリットを解消

2020年(令和2年)7月より、自筆証書遺言を法務局に預けられる「自筆証書遺言書保管制度」が新しくスタートしました。この制度を利用して法務局に自筆証書遺言を保管すれば、自筆証書遺言のデメリットを一部解消することができます。

法務局に遺言書を保管すれば、遺言書の紛失や改ざんを防ぐことができます。法務局に預けるときには形式面のチェックがあるので、遺言書が無効になるリスクもなくなります。法務局に預けられた遺言書については、検認が不要になるというメリットもあります。

なお、自筆証書遺言書保管制度でチェックしてもらえるのは形式面のみになります。遺言書の内容が適切かどうかなどの相談には、法務局では応じてもらえません。別途専門家に相談することを考えましょう。

3. 遺言と遺留分の関係について(1)

遺言書を書くときに忘れてはならないのが「遺留分」です。遺言書でも全く自由に財産の分け方を決められるわけではなく、遺留分という制約があります。

3-1. 遺留分とは

遺留分とは、一部の相続人に認められている最低限の相続割合です。亡くなった人の家族は、財産を当然相続できるものという期待を持っているのが普通です。遺言者が100%自由に財産の承継先を決められるとすると、残された家族の生活に支障が出ることもあるでしょう。

こうしたことから、亡くなった人に近い関係の家族については、遺留分として、法律上当然相続できる財産割合が確保されているのです。

3-2. 遺留分権利者

遺留分を持っているのは、兄弟姉妹以外で相続人になる人です。遺留分を持っている人のことを遺留分権利者と言います。法定相続人及び遺留分権利者は次のようになります。

優先順位 法定相続人 遺留分の有無
常に相続人 配偶者 あり
優先順位あり 第1順位 子供(または孫など) あり
第2順位 直系尊属 あり
第3順位 兄弟姉妹(または甥・姪) なし

3-3. 遺留分の割合

民法では遺留分の割合として、相続人全員での割合が次のように指定されています。

(1) 直系尊属のみが相続人の場合…相続財産の10分の1
(2) (1)以外の場合…相続財産の2分の1

各相続人の遺留分の割合は、上記相続人全員での割合に、各相続人の法定相続分をかけたものになります。

3-3-1. 法定相続分とは?

法定相続分は、同順位の相続人が複数いれば平等に分けた割合、配偶者と他の相続人がいる場合には次のような割合になります。

相続人の組み合わせ 法定相続分
配偶者と子供 配偶者2分の1、子供2分の1
配偶者と直系尊属 配偶者10分の2、子供10分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3、子供4分の1

3-3-2. 遺留分の割合は?

各相続人の遺留分の割合は、次のようになります。

相続人 遺留分
配偶者のみ 配偶者→2分の1
配偶者と子供 配偶者→4分の1、子供→4分の1
配偶者と直系尊属 配偶者→10分の1、直系尊属→6分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者→2分の1、兄弟姉妹→なし
子供のみ 子供→2分の1
直系尊属のみ 直系尊属→10分の1
兄弟姉妹のみ なし

遺留分が問題になるのは、遺言書が残されているケースです。遺言書が残されていない場合、相続人には法定相続分を相続する権利があります。

4. 遺言と遺留分の関係について(2)

遺言書を書くときには、遺留分に注意しておかなければなりません。遺留分を無視した遺言を残せば、相続開始後にトラブルになる可能性があります。

4-1. 遺留分を侵害する遺言書でも無効にならない?

遺留分を無視した遺言書を書いても、直ちに無効になるわけではありません。遺留分を侵害する内容であっても、遺言自体は有効です。遺言書が残されていれば、遺言に従って相続が行われることになります。

4-2. 遺留分侵害額請求をされる可能性がある

遺留分を侵害する遺言書を書いた場合、遺言によって財産を取得した人が、遺留分権利者から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。遺留分侵害額請求とは、遺留分に相当する金銭の支払いを請求することです。

遺留分の侵害に対しては、以前は遺留分減殺請求として、遺留分権利者が現物返還を請求できるしくみになっていました。2019年(令和元年)7月の民法改正により、遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求となり、遺留分をお金で返す形へと変更されています。

4-3. 遺言書による遺留分対策とは

遺言書がもとで、遺留分をめぐってトラブルになるケースは多くなっています。遺言により財産を相続する人が遺留分侵害額請求を受けないようにするために、事前にできる対策を知っておきましょう。

4-3-1. 遺留分を相続させる内容にする

遺留分を無視した遺言書を残せば、財産を承継させた人が遺留分侵害額請求を受けてしまう可能性があります。遺言書を書くときには、遺留分権利者に、最低でも遺留分は相続させる内容にすることを考えましょう。

4-3-2. 付言事項を活用

遺留分権利者にどうしても遺留分を相続させられない場合、その理由を付言事項で書いておく方法があります。遺留分権利者以外に財産を相続させる理由や、遺留分侵害額請求を行使しないでほしいという自分の気持ちを書いておくことで、理解を得られる可能性があります。

4-3-3. 遺留分を放棄してもらう

遺言書を書くと同時に、遺留分権利者に遺留分を放棄してもらう方法もあります。裁判所の許可を得た場合には、相続開始前に遺留分の放棄ができます。

遺留分放棄はあくまでも遺留分権利者本人の意思で行わなければならず、強制的に遺留分を放棄させることはできません。合理的な理由や、他に見返りを得ていることも必要になります。既にそれなりの財産を生前贈与しているような場合でなければ、裁判所の許可は受けられませんから注意しましょう。

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