コラム
- 2021.10.19
- 家族信託の手続き一覧!流れやポイントを解説!
家族信託は比較的新しい制度であるため手続きの流れが分からないというご相談をよくいただきます。
ここでは専門家が家族信託の流れを解説します。
家族信託の手続き
時系列に並べていますので、この通りに進めていけば家族信託の手続きを完了させることができます。
(1)家族信託の目的と内容を話し合って決める
家族信託をどういう目的で行うのか、どの財産を信託するのか等の家族信託の設計方法については十分な話し合いが必要です。誰もが納得できる形を模索して家族信託の内容を取り決めるのが理想です。
このプロセスをおろそかにすると、後でトラブルの原因になります。そうなると家族信託本来の目的が果たせなくなる恐れもあります。トラブルを避けるためにも、家族間でそれぞれ想いを共有する為の家族会議を開くことから始めていきましょう。
(2)信託契約書を作成する
あらかじめ収集した情報に基づいて、信託契約書を作成します。信託契約書のひな形をダウンロードできるものもありますが、まだ家族信託という制度自体があまり一般的ではないため、契約書自体の形式もまだ確立されていません。信託契約は、決められた条項や内容を入れないければ、想定外の問題が発生する場合もありますので、家族信託についての本などを参考にしながら、必要事項に漏れがないかよく確認するようにしてください。
(3)信託契約書を公正証書にする
契約書の効力をより確実なものにするために、信託契約書を公正証書で作成するという方法があります。公正証書で作成すると原本は公証役場で保管されるので、契約書紛失のリスクを予防することができます。また、公証人が関与して本人確認、意思確認がしっかりと行われた信託契約書を作成する為、契約書作成時に本人の意思判断力があったことの証明にもなります。
公正証書の作成は、最寄りの公証役場で行います。公証役場で相談をした後、契約書に委託社と受託者の印鑑を押して、作成手続きが完了となります。
(4)信託財産を受託者に名義変更(信託登記)
信託契約書を作成しただけでは、実際に本人の財産を管理・運用することはできません。不動産など名義の概念がある財産は、委託者から受託者へ名義の変更が必要となります。この場合、単なる登記ではなく信託登記の形で名義が変更されるため、その財産が委託者からの信託財産であることが明記されます。
(5)金銭を信託するための銀行口座を開設する
受託者は財産の管理を任されたのであり、財産をもらったわけではありません。そのため受託者自身の資産と別枠で管理をする必要があり、銀行口座を分けて管理するのが一般的です。
信託財産に関するお金の管理をするために、「委託者〇〇受託者〇〇信託口」というような信託専用の別口座を作ります。但し、この信託口座を作ることができる金融機関は限られているので、対応している金融機関を探す必要があります。
(6)信託による財産管理の開始
ここまでの流れを経て、家族信託の手続きは完了です。以後は受託者が委託者の意向に沿って財産を適切に管理・運用していきます。
家族信託のメリット
柔軟な財産管理が実現できる
任意後見制度において後見人には毎年の家庭裁判所への報告義務や、財産の積極的な活用がしにくい、生前贈与などの相続税対策がしにくいなど、負担と制約が多かったです。さらに、本人の判断能力が衰えるまでは財産の管理はできません。
家族信託であれば、判断能力があるうちから本人の希望する人に財産管理を任せることができます。また、もし本人の判断能力が失われた場合でも、本人の意向に沿った財産管理をすることができます。
遺言書のような効力を持っている
遺言書を遺す場合には、民法で定める遺言書の作成方法に従わなければならないため、手続きは厳しく確認されます。
家族信託であれば、信頼しあっている委託者と受託者との契約で行うので、厳格な方式によらず、自分の死後に発生した相続について財産を承継する者を指定することができます。
また、家族信託では二次相続も指定できるので遺言書よりも自由度を高く、個々の被相続人や相続人の意向に応じた相続の仕組みを作ることができます。
財産承継の順位づけができる
家族信託を利用すれば、もし最初に指定した受益者が亡くなってしまっても、その次の受益者の指定をすることができます。
(生前贈与や遺贈では、その次に相続が開始した場合の相続人を指定できません。)
贈与税をかけずに事業承継ができる
株式の評価がゼロに近い時期に本人(現経営者)を委託者兼受託者、相続人を受益者という自己信託(家族信託の一類型)を行うことで、贈与税をかけずに株式(受益権)を子ども等に承継させ、かつ自身も変わらず議決権を行使して経営に参加することが可能になります。
倒産隔離機能がある
家族信託には、将来自分委託者や受託者が信託財産に関係のない多額の債務を負った場合でも、信託財産は差押えられないという倒産隔離機能があります。
ただし注意点として、信託財産は受益者の「信託受益権」となっているため、受益者が強制執行などを受ける場合は差押えられます。
配偶者の認知症対策に活用できる
もし、配偶者が認知症で自分が先に亡くなった場合、判断能力がないため賃貸借契約や更新などの手続きができないというリスクがあります。
そこで、家族信託で自分が亡くなった場合の受益者は配偶者に変更する」と定めておくことで、認知症である配偶者の生活のために財産を利用することが可能になります。
家族信託手続きの注意点
家族信託手続きを進めていく際に、注意するべき事があります。
信託の「30年ルール」というものです。
家族信託手続きに必要な情報の項目に信託期間というものがありました。
これは任意で決めることができる期間ですが、家族信託には法的に「上限」があります。その上限とは30年で、家族信託が発効してから30年後以降に受益者となっている人が亡くなると、その時点で家族信託の効力は自動的になくなります。
これは「30年ルール」と呼ばれており、家族信託の効力をどこまで及ばせたいかという検討をする際には知っておくべきことです。
司法書士に家族信託を頼むメリット
必要な諸手続きをワンストップで依頼できる
家族信託を実行する際、不動産があれば信託登記の申請が必要であり、その場合は司法書士に依頼をするケースがほとんどです。
その際、司法書士に依頼すれば信託契約書の作成や信託口講座の開設など、家族信託の手続きをワンストップで依頼ができるため、ほとんどの書類作成や手続きをあなたの代わりに行ってもらうことができます。
家族信託で特に必要な知識を普段から多く扱っている
家族信託全体を設計する場合、成年後見制度・遺言・信託登記等の幅広い知識が必要です。
司法書士は普段の業務から相続登記・遺言・成年後見をメインに扱っていますので家族信託に必要な専門知識量も豊富な傾向にありますので、どのような場合や意向でもアドバイスができるでしょう。
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